矢野久美子「ハンナ・アーレント」
著 矢野久美子
中公新書 (2257)
初版 2014年
政治哲学者であるハンナ・アーレント(1906-1975)の生涯が分かりやすく1冊の本にまとめられた作品。
大学でハンナ・アーレントの「人間の条件」を読む勉強会が開催されるかもしれないということで。「人間の条件」はどうやら難しい本らしいし、それを読む前にハンナ・アーレントについて知れたらと思って購入したもの(実際は、本屋にぶらりと立ち寄ったら文庫コーナーで偶然的にパッとこの本が目に入ったので買ったのだけれど)。
[全体的な感想]
まず、アーレントの人生に大きく関与していた存在があの有名なドイツ哲学者のハイデガーであること、そして彼女の人生に彼以上に関与していたのがカール・ヤスパースという存在がであることを知って素直に「へえ」と思った。
個人的には、当時妻子持ちのハイデガーと学生であったアーレントの恋物語がもっと知りたいなと思いつつ。
本を読みながら、本の内容は1950年代ごろの話をしているのに「あれ、これは今の日本の話をしているのかな?」と思ってしまう所が結構あった。
[部分的に印象に残ったところ]
「とりわけ亡命ユダヤ人は「われわれのパンを奪う」不審な外国人として、メディアや大衆による排外主義的な言動にももさらされた(p.49)」
[作中に出てきて気になった本]
政治が全体主義に傾く要因を幅広い視点から分析して明らかにしたもの。
第二次世界大戦後、ナチでユダヤ人虐殺の指揮官にあったアイヒマンをイェルサレムの裁判所で裁く、いわゆるイェルサレム裁判について扱ったもの。アイヒマンは人びとの想像するような「悪の権化」的な存在ではなく、実はただの「つまらない」男でありそんな男がユダヤ人虐殺を遂行していたことに対して問題関心が置かれている。
川島正樹「アメリカ市民権運動の歴史」
アメリカで起こったリトルロック事件で、当時セントラル高校に入学した黒人学生の一人であるエリザベス・エッグフォードへのインタビューが載っている。