読書記録

読書の備忘録

米原万里「終生ヒトのオスは飼わず」

米原万里「終生ヒトのオスは飼わず」

出版社 文春文庫

2010年出版

 

生活が少し落ち着いてきたので、また何か本を読もうと思って自分の部屋にある本棚の前に立った。

そこで、目に入ってきたのがこの本だった。

米原万里の本は結構好きで、彼女の本は割と収集して本棚に収めてある。

久し振りに彼女の本をとったが、やっぱり相変わらず豊富な知識と冷静な分析批判と所々に散らばっている面白おかしい話に夢中になり、すぐに全部読んでしまった。

 

この本の大半は、著者である彼女が飼っているペットの犬猫たちの話。

私は一度も犬猫などのペットを飼った事はないが、それでも楽しく読むことが出来る。

そして、ペットを飼う間に挟み込まれている彼女の通訳家としての生活の話も面白い。

迫って来る国際会議を前に、何十冊もの本を読んでロシア語を頭に猛烈に詰め込んでいく様を見て

通訳って面白そうだけど何よりすげー大変そう…と閉口してしまう。

 

米原万里は、歯に衣着せず痛烈な批判をする人物でもある一方で、飼っているペットだけでなく他の犬猫たちを愛している様子を見ているととても愛情深い人物だったんだなあと感じる。

 

彼女の文体は活き活きとしていて、まるで今目の前で起きている事象をとても面白可笑しく上手く語っている。しかし、同時にこれらを語る彼女は既に11年前にこの世を去ってしまった事を思い出す。

この世を去って約10年も経っているのにも関わらず、この世に生きた痕跡を残せるってなんとも感慨深い事というか、凄い事だなあと個人的には思った。

 

以下、なるほどな~と思った部分だけを抽出して記載。

 

pp.204-205「要するに言語の使命は、決して美しく整っていることなんかではない。世の中の森羅万象、それに複雑怪奇な人の精神を描き出し、罵り、分析し、弾劾し、解釈し、批判し、祝福し、乗ろうためには、美しい言葉だけではとうてい間に合わないというもの。評判の悪い「ウザイ」「キモイ」「ムカツク」だって、今の若者たちのそういう心の状態をみごとに的確に表現しているではないか。そして、言葉にとっては、それこそが命なのだと思う」

p.206「でも、核武装を説く人たちの、あたかも核兵器さえ持てば、まるで魔法の杖みたいに、日本の国際的発言力や威信が増し、安全保障上の問題が一気に解決するみたいな口ぶりには首を傾げてしまう。中途半端な核武装がたどる悲惨な運命は、イラク北朝鮮で証明済みだし。」