読書記録

読書の備忘録

神谷悠介「ゲイカップルのワークライフバランス 男性同性愛者のパートナー関係・親密性・生活」

「ゲイカップルのワークライフバランス 男性同性愛者のパートナー関係・親密性・生活」

神谷悠

新曜社 2017年

 

 明けまして御目出とう御座います。今年も宜しくお願い致します。

 今年はもう少しこのブログを読書録として使っていきたいなあと思いまする。

 

 この本を見つけたのは、昨年の社会学大会の目録の後ろの方の広告を見たからでした。割とLGBTのことに関しても興味関心があり、「へえこんな本が出るんだな、面白そうだなあ」と思って先日ようやく出版されたのでアマゾンでポチリしました。

 以下、私の気になったとことか思ったことをぽちぽちと。あまり、読まれることを想定して書いてないので読みづらいかも。まあ、コメントとして。

 

p.32
ミシェル・フーコーは近代社会において同性愛者のアイデンティティが構築されるメカニズムを、医療化や近代国家による人口への関心に焦点を当てて解明した(Foucault 1976=1986)
ジョン・デミリオは家族を基盤とした家内経済から資本主義の自由労働システムの移行によって、異性愛家族の外部で同性への性愛的/情緒的関心に基づく個人生活が可能になったとしている(D’Emilio 1983=1997)

 このフーコーの方の、構築されるメカニズムと、医療化や近代国家といったマクロな視点がどう結びついたのだろう。研究をしている中で?
 このデミリオの研究も、同性での個人生活が可能になった要因も家内経済から資本主義の自由労働システムといったマクロな視点に結びつけることが出来たのだろう。

 勿論実際このフーコーとデミリオの論文を読まなければいけないとは思うのだけれど、自分が最近質的調査方法を学んでいく中でこの自分の研究は随分と「時」と「場所」と「対象」をとても制限した中で行われることだと思う様になった。まあだからといって研究の意義が無いとは思わないのだが、自分の研究がこの様なマクロなものに接続するにはどうすれば良いのだろうと思った。

p.50
調査票を用いてあらかじめ想定した変数のみで調査する方法では、想定されない変数による影響を分析することが不可能なため。

 量的調査法で用いられる変数生成のために役立つ質的調査。

 質的調査の利点というのは、幾つかあると思うのだが、やはり量的調査に用いられる変数を新たに発見することが出来るというのは質的調査法の良点の1つだと思った。

 やはり、質的調査を用いるのであれば、質的調査の利点をとことんまで生かすことが必要なのだろうなと思った。

 

p.79

ゲイカップルは家事を外部化しているかーにおいて、どの様な条件下において家事の外部化が進行するのか、しないのかに焦点をあてている。

 質問項目がなんだか、既存の従属変数に依存している気がする。質的調査法の利点というのは、既存の従属変数だけでなく新たな従属変数の存在を発見することではないのか。そもそも、欧米と日本では家事サービス化の進行程度に関しては大きな差異があるだろう。しかも、日本の方が同性愛者に対する偏見が相対的に強いのは明白だし、そんな状況下で他人をパートナーと共に居住する空間に入れることは容易なことではないだろう。
 それよりも、お金を何に使うかという所に質問を割けば良いのでは…?

p.100

 専業主婦になることを理想としている男性が出てきたが、何故彼がその様な理想を内面化する様になったのかが個人的には気になった。

p.106

仕事と愛情表現

 もっと質問項目も、知りたいこととダイレクトにつなげていくべきなのでは?と思った。例えば、「パートナーが沢山家事をしてくれると、大切にされていると思うか?」といった風に。掲載されている質問項目だけでは、「それは愛情表現というのか…?」と疑問だった。

 更に全体を通してだが、今のパートナーとだけでなく、過去に同居したパートナーとの家事分担の要因も聞けば良かったのではないか。その方が、家事分担の要因を更に見れる気がする。

 

 本著は、日本でも珍しくゲイカップルを対象とした、彼らのパートナー関係・親密性・生活を明らかにしたLGBT関連の研究ではかなり先駆的な研究になるのではないかと思う(あまり研究としてのLGBTの動向に関しては詳しくないのだが)。多分彼らの生活にアクセスするのも中々難しかったのではないかとも個人的に推察する。そんな中で子の様な研究が出来たのは素直に凄いなあと思った。更に、調査実施日や日時、依頼方法なども事細かに記していて、「あ~こんな感じなんだ」と質的研究手法をやっている1人として参考になる部分も多々あった。又、LGBT関連の周辺領域の研究紹介も具に記されていて、「なるほど、こんな感じで研究を網羅してんのか」と参考になった。

 

 ただ一方で、なんだか周辺領域の課題がぼかぼか出てきて、何だか結局どこを明らかにしてどこを明らかにしていないのか途中でよく分からなくなった。(いや、私の読解力にも問題あるとおもうのだけれど)それと、半構造化インタビューの中身を見たが、質的調査方法の利点である「語りの厚み」みたいなものがどこか薄っぺらく感じてしまった(いや、本当にすみません。私自身にも言えることなのだが)。恐らく研究の中身がかなりセンシティブなものであるからこそ、「削らなければならない部分」が多々あったのだろうと思う。しかし、それにしても質的調査法の良さを生かしきっているとはあまり思えなかった。というのも、他研究で用いられている従属変数を用いてインタビューを行っているからではないかと思う。勿論、この研究の第一義は「あまりよく知られていない日本のゲイカップルの生活の様相」を明らかにすることだと思うので、欧米の研究で用いられている従属変数を用いてそれを明らかにするだけでも研究の意義はあると思う。しかし、それだけでなく、この研究ならではの従属変数生成のカケラみたいなものを発見し、それをとっかかりに研究を進めていけばもっと面白くなったのでは?と考えもした。

 

とりあえず、こんな感じで感想終わり。