「説教したがる男たち」著レベッカ・ソルニット 訳ハーン小路恭子
「説教したがる男たち」 Men Explain Things to Me
殺人犯の90%は男性。
著 レベッカ・ソルニット
訳 ハーン小路恭子
もし私が誰かに「フェミニズムやジェンダーについて知りたいんだけど、なにか良い本はないかな?」と尋ねてきたら、私には真っ先に名を上げたい本が3つある。
1つ目は、ベル・フックス著『フェミニズムはみんなのもの:情熱の政治学』
2つ目は、チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ著『男も女もフェミニストでなきゃ』
そして、最後の3つ目が今回の本。レベッカ・ソルニット著『説教したがる男たち』だ。
これらの本はどれも、初学者にとっても分かり易い言葉と論理を使って、現在議論されているフェミニズムの世界へと誘ってくれる。
私のおおまかな印象でいえば、
フックスは人種・階級といった様々な要因を踏まえながらフェミニズムを議論し、
アディーチェは非常にシンプルで明快な言葉で、日常生活で誰もが経験しそうな出来事を例に、ジェンダー差別が根強く存在している現実世界について話をしてくれる。
そして、このソルニットの本は数字を用いて、いかに今の現実世界で”女性”が差別され傷ついているかを説得力を以て訴えかけてくれる。
例えばなのだけれど、
誰かが女性が「女性」というだけの理由で、これだけ女性は苦しい思いをしているのだとする。
その時、それを聞いたあなたはその「女性」という単語のスケールのあまりの大きさに眩暈を感じるかもしれない。
そして、もしかしたらあなたは、「苦しい思いをしているのは女性だけではなく、男性もだ」と反論をして、その主語のあまりの大きさを指摘し、視点の変換を求めるかもしれない。
ちなみに、フェミニズムやジェンダーを学ぶ前のかつての私がそうだった。
ソルニットの本は、そういった反論を踏まえた上で、あまりにも社会構造的に世界で女性が「女性」であることで、差別をうけ、傷つき、時に魂を殺されるかのような経験を受けていることをあまりにも沢山の具体的な事例を引き出して説明してくれる。
本の中に、アメリカのフェミニストの引用でこんな言葉があった。
「フェミニズムとは、女性を人間として扱うことを要求するラディカルな思想である」
会社で働いていると、年代があまりにも異なる男性上司が、女性部下をどのように扱っていいのか分からず躊躇うという話を聞いた。
それを聞いて、何故「女性」であるとか「男性」であるかという性別がそこまで部下の扱いに影響を及ぼすのか疑問に思うようになった。
そうではなく、「女性」も「男性」も1人の人間として尊重した扱いをすれば良いだけのはずである。
私たちの生きている世界は、あまりにも「女性」と「男性」でなにもかもを二分にして、なにかを説明しようとしたがる。そして、その説明に納得をする人間が多いのも事実だ。
しかしそうではなく、目の前にいる人を、純粋に対等な人間として尊重して接していきたいと考えている。